The Appeal / John Grisham著
またしてもGrishamらしい意表を突いたテーマで、展開の速さ、綿密に組まれたプロット。読み始めたらもうとりこになってしまう。後半は一気呵成である。やっぱりGrishamってうまいなあ。
そうか、(州)最高裁判所の判事を選挙で選ぶというのはこういうことなんだとようやく納得する。もちろん著者があとがきで念を押しているようにこれは全くのフィクションだけれど、こういうものなんだ、と納得してしまう。投票が作意と資金を持った一部の人々(階級)によって買われてしまう、というのは民主主義国家にあっては許しがたい犯罪だけれど、現代では銃や金(アメとムチ)を使わなくても合法的な世論操作を使えば何のことはない。
この世論操作もGrishamは上手だ。彼は実際にどこかの選挙参謀を綿密に取材したんじゃないかしら?操作されている一般の人々は自分たちが踊らされているとは知る由もないので、現実にそうされていたとしても不思議ではない。
ふーん、アメリカの裁判主義ってこういうことに行き着くのね、なんて他人事だと思っている場合じゃない。私は今まで最高裁判所の裁判官の信任投票にろくすっぽ関心を持ったことがない。選挙公報のどっか目立たないやつに裁判官の皆さんの略歴みたいなのが載っているよね。あれを読んでも―読んだことはあるんだ―出身大学ぐらいしか見ないもんね。法律のことはよく分かっている方々がうまくやってください、ぐらいにしか大抵の日本人は思ってなかったよね。ようやく最近でしょ、裁判員制度が始まって「それってなによ!?」式に国民が声を上げ始めたのは。
それはそれとして、この本は面白い。クライマックスでこういう事件が起こるんだろうな、という予感はGrishamファンならきっと付いているだろう。それでも面白い。むしろエンディングは意外な感じ。勧善懲悪ものではないにしても、ビッグ・カンパニーの大富豪を少し痛い目にあわせるのかと思っていたから。
そうしなかったあたり、著者の「完全なフィクションだけれど、現実もまあこんなもんでしょ」という声が聞こえる気がする。できることなら、この次の作品では悪役をぎゃふんと言わせてほしい…
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